残業代を請求するにあたって、労働者側が「残業の存在」と「時間」を立証する必要があります。
このページでは、残業代請求に精通した弁護士が、どのようなものが証拠になりうるかについて解説します。
執筆者情報
弁護士 黒田 修輔 / 久保 直子


ともに弁護士経験15年以上と経験豊富であり、残業代請求に注力。
最新の判例なども踏まえた強い交渉力を強みとしている。
執筆者情報
弁護士 黒田 修輔 / 久保 直子


ともに弁護士経験15年以上と
経験豊富であり、残業代請求に注力。
最新の判例なども踏まえた
強い交渉力を強みとしている。
有効性:非常に高いタイムカードや勤怠管理ソフトの記録
必要な内容
- 労働時間の開始時刻と終了時刻が正確に記録されていること。
- 手書きの修正がなく、会社側のシステムで一貫して管理されているデータ。
- 上司や管理者の承認印やデジタルサインがある場合はさらに強力。
- タイムカードの記録があれば、労働者が記録通りに労働したことが事実上推定されます。
有効性:中程度業務日報
必要な内容
- 業務の具体的な内容、作業時間、進捗状況が詳細に記録されていること。
- 書式が統一され、提出履歴(メールの送信記録や会社の承認)が確認できるもの。
- 作業時間が実際の労働時間と一致していることが重要。
業務日報・作業日報等による労働時間の認定を肯定した裁判例
- 運転日報 大阪高判S63.9.29
運転報告書の記載に基づく実労働時間の推計は、客観的資料に基づくものであって合理性があると判示した。 - ダイアリー 大阪地判H16.10.22
作業日報を作成するために、従業員が別途作成していた出勤時刻、作業内容及び就業時間を記録したダイアリーに記載された労働時間を根拠とした。 - 勤務リストや営業日報 大阪地判H19.10.25
勤務リストや営業日報などの記載に基づく労働時間の算出方法に一応の合理性を有しているとして認容した。
有効性:高いパソコンのログ記録
必要な内容
従業員は、一般的に、出勤直後にパソコンのログインを行い、退勤直前にパソコンのログアウトを行うものであることから、パソコンのログインからログアウトまでは使用者の指揮命令下に置かれて労務を提供していたことを、経験的に推認しうる。
有効性:中程度交通系ICカードの記録
必要な内容
- 通勤や外勤のために利用した交通機関の乗降履歴。
- 時刻や経路が労働時間や業務内容と矛盾しないこと。
- 出張や外出中の移動履歴として利用する場合に特に有効。
- しかし、最寄駅から事業場との間を直行直帰したことが立証されるなどしなければ必ずしも適切なものとは考えられない。
乗車券による労働時間の認定を否定したが、限定的に証拠としての価値を認めた例
東京地判H23.12.27
裁判所は駅の出入時刻は、駅に入場したという事実を証するものであっても、始業時刻や終業時刻そのものではないとした。
しかし、IC乗車券の記載等によって客観的裏付けがえられる範囲において、手帳に記載された始業時間・就業時間を労働時間と認定した。
有効性:高程度タコグラフ(運行記録用計器)
必要な内容
タコグラフの記録からは、走行速度、走行距離、走行時間などが明らかになります。
自動車の運転走行中の時間については、基本的に、使用者の指揮命令下に置かれた労働していた時間であると事実上の推定が働きます。
有効性:高程度
管理職手当加算分確認表
必要な内容
労働者の時間外労働時間の管理が、労働者が自らが時間外労働の時間を記載して作成し、所属長がその時間を確認し、その記載に基づいて時間外勤務手当が支給されることとされている。
当該確認表の記載を基礎として、時間外労働時間数を算定することが合理的です。
裁判例
大阪地判H27.1.16
職員の時間外手当勤務時間は、管理職加算分確認表によって管理されていたものであるとして、基本的に管理職手当加算分確認表に基づいて時間外労働時間を算定し、時間外勤務手当の請求を認容した。
有効性:高い(間接証拠として)雇用契約書や労働契約書
必要な内容
- 勤務時間、賃金形態、残業手当の支払いに関する明確な記載。
- 雇用主の署名や印があり、法的に有効な文書。
- 労働条件通知書でも代替可能。
有効性:高い(間接証拠として)給与明細
必要な内容
- 基本給や残業代の支払い状況が明示されていること。
- 支払われた残業代が労働時間と一致しているかを確認するために利用可能。
- 通常賃金と割増賃金の計算が正確であることが重要。
有効性:中程度(間接証拠として)源泉徴収票
必要な内容
年間の総収入額が記載されているため、給与明細と照らし合わせることで不払い残業代の推測が可能。
労働契約内容やタイムカードのデータと組み合わせることで活用。
総評
複数の証拠を組み合わせることで説得力が大幅に向上します。
特に、タイムカードや入退室記録などの客観的データが重要ですが、日記やメモ、業務日報のような主観的な記録も補強材料として有効です。
また、証拠の改ざんを防ぐため、可能な限り原本や公式記録を保管することが推奨されます。